fanon の意味とは?
fanon(ファノン)は「ファンの間で広く受け入れられている非公式の設定・解釈」を指すファンダム用語です。
公式の物語・設定(canon)ではないものの、二次創作やファンコミュニティ内で定着し、まるで公式設定のように扱われている要素を指します。
日本語だと「集団幻覚」「非公式な共通認識」のようなニュアンスになります。
「fan(ファン)」と「canon(正典・公式設定)」を組み合わせた造語です。
fanon の核心的な特徴は「個人の解釈(headcanon)」ではなく「コミュニティ全体で共有されている」という点です。
多くのファンが同じ非公式設定を採用して二次創作を書き、ファンアートを描き、議論するうちに「公式設定のように定着した」ものが fanon と呼ばれます。
fanon と canon の境界線は実は明確ではなく、時には fanon が後から公式設定として採用されることもあります。
Star Trek キャラクター Nyota Uhura の名前はもともとファンが作った fanon でしたが、2009年の映画で公式の名前として採用されました。
fanon はどんな時に使う?
二次創作の設定の出所を示す時
「A lot of people think that’s canon, but it’s actually fanon that started in fanfiction(多くの人がそれを公式設定だと思っているけど、実際にはファンフィクションから始まった fanon なんだよ)」のように、ファンの間で広まった解釈が公式設定と混同されている時に出所を明示するために使われます。
AO3・Tumblr・Twitter・Reddit のファン議論でよく見られる使い方です。
公式設定と非公式解釈を区別する時
Reddit や Twitter でファンが作品について議論する際、「どこまでが公式で描かれた内容でどこからがファンの創作か」を明確にする必要がある場面で使われます。
特に長期シリーズや複数のメディア展開がある作品では、canon と fanon の境界線が複雑になりやすく、議論の前提として「これは canon か fanon か」という確認が重要になります。
コミュニティの共通認識を描写する時
「I love this fanon version of the character, even though it’s completely different from canon(このキャラの fanon バージョンが大好き、公式とは全然違うけどね)」のように、コミュニティが育てたキャラクター像を愛情を込めて語る時にも使われます。
fanon は批判的な言葉ではなく、ファン文化の創造性の産物として肯定的に語られることも多いです。
新規ファンへの説明として
新しく作品のファンになった人が fanon を公式設定だと勘違いしている場合、「That’s actually fanon(それは実は fanon だよ)」と説明する形でも使われます。
ベテランファンが新規ファンに作品理解を深めてもらうための用語として機能します。
fanon の元ネタ・由来
「fan canon(ファン・キャノン)」の短縮語として
fanon は「fan canon(ファンによる公式設定)」を短縮した言葉です。
「canon(正典)」というもともとの宗教用語は Ronald Knox の1911年の Sherlock Holmes に関する論文でフィクション作品への転用が始まり、1990年代〜2000年代初頭にかけてファンコミュニティで「公式設定」を指す言葉として広まりました。
この canon に対してファンが作った設定を「fan canon」→「fanon」と略したのが語源です。
Harry Potter・Star Trek・FanFiction.net 時代での誕生(1999〜2000年代)
fanon という概念が具体的な形を取り始めたのは1999年以降です。
1999年9月4日に最初の Harry Potter ファンフィクションが FanFiction.net に投稿されたことを機に、Harry Potter ファンダムは爆発的に成長し、大量の二次創作が生み出されました。
その中で「Remus Lupin はチョコレートが好き」「James Potter の両親の名前」などのキャラクター設定がファンの間で共有されていきました。
Star Trek ファンダムでも、スクリーンには登場しなかった情報がファンの間で事実として広まり、後から新作がその「事実」を否定するという fanon 特有の問題が起きることで知られています。
Fanlore での定義確立・Tumblr での爆発的普及(2008〜2010年代)
2008年設立のファン文化専門 Wiki・Fanlore で fanon の定義が明文化されました。
2010年代に Tumblr がファンダムの中心プラットフォームになると、Supernatural・Sherlock・Marvel Cinematic Universe などの大型ファンダムで次々と fanon が生まれました。
Tumblr のリブログ文化により特定の fanon 解釈が瞬く間にコミュニティ全体に広がるようになり、fanon という言葉も爆発的に普及しました。
またこの時代から、公式制作側が fanon を後から公式設定に取り入れるケースも見られるようになっています。
代表的な例が Star Trek キャラクター Nyota Uhura の名前で、40年以上ファンが fanon として使い続けていた名前が2009年の映画で正式に公式設定として採用されました。
例文・使い方
fanon は悪い意味?ポジティブな意味?
fanon は基本的に中立的な言葉で、ファンの創造性やコミュニティの結束を示す言葉として肯定的に使われることが多いです。
多くのファンが共有する fanon はその作品への深い愛情と理解の表れであり、二次創作文化を豊かにする要素として評価されます。
ただしネガティブなニュアンスで使われることもあります。
fanon が公式設定と混同されて原作を誤解させる・原作の描写を無視した fanon が事実のように広まる・新規ファンが原作を理解する妨げになるといった場合には批判的なトーンで使われます。
また公式が新しいコンテンツを発表して長年の fanon と矛盾した時、ファンの間で賛否が分かれることもあります。
「fanon の方が好き」という声と「これが公式(canon)だ」という声が衝突するのはファンダムの定番の対立です。
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まとめ
fanon は「ファンの間で広く共有された非公式の設定・解釈」を指す言葉で、「fan(ファン)」と「canon(公式設定)」を組み合わせた造語です。
1999年の FanFiction.net 時代の Harry Potter・Star Trek などの大型ファンダムでの膨大な二次創作を通じて生まれ、2008年の Fanlore での定義確立・2010年代の Tumblr での爆発的普及を経て定着しました。
公式設定(canon)と対になる概念として二次創作・ファンコミュニティの議論で欠かせない言葉で、時に公式制作側がファンの fanon を逆輸入して公式設定に採用するケースもあり、canon と fanon の境界線はますます興味深いテーマになっています。

