retard とは?【使用厳禁】の差別用語の意味・ダメな理由を解説

retard とは?【使用厳禁】の差別用語の意味・ダメな理由を解説 スラング

retard とは何か

retard(リタード)は、かつてアメリカの医療・教育現場で「知的障害」を意味する診断用語として使われていた言葉です。
現在では極めて深刻な差別用語(ヘイトスピーチ)として認識されており、英語圏では「R ワード(the R-word)」または「R スラー(R-slur)」と呼ばれ、直接口にすることすら避けられています。

SNS やゲームコミュニティで「バカ」「間抜け」という軽い意味で使われることがありますが、それは差別的な行為です。
この記事では、なぜこの言葉がこれほど問題視されているのか、その歴史的な経緯と社会的な影響を解説します。

なぜ問題なのか

医療用語から差別語への変化

retard という言葉の動詞形「to retard」は「遅らせる・妨げる」を意味する一般的な英単語です。
19世紀末〜20世紀初頭にかけて「精神的な発達が遅れた状態」を指す医療用語として「mentally retarded(精神発達遅滞)」という表現が生まれ、当時は中立的な診断用語でした。

かつては「moron(痴愚)」「idiot(白痴)」「imbecile(魯鈍)」なども知的障害の程度を分類する正式な医学用語として使われていましたが、1960年代頃からこれらが侮蔑語として使われるようになり廃止されました。
retard はその代替として医療現場に入りましたが、やはり同様の経緯をたどりました。

「診断名」が「罵倒語」になるプロセス

医療用語として使われていた言葉が一般社会に広まる過程で、「知的障害がある=バカ・劣っている」という偏見と結びつき、侮蔑表現として使われるようになりました。
「Don’t be such a retard(そんなバカなことするなよ)」のように使われる時、その言葉は「知的障害者と同レベルだ」という意味を内包しており、知的障害を持つ人々とその家族に深刻な傷を与えます。

Special Olympics と Best Buddies の調査では、知的障害に関する SNS 投稿の3分の2以上がネガティブな内容であり、約2,900万件のポストに R ワードを含む侮蔑表現が含まれていたと報告されています。

Rosa’s Law(ローザ法)の成立(2010年)

2010年10月5日、バラク・オバマ大統領が「Rosa’s Law(S.2781)」に署名しました。
この法律により、アメリカの連邦法の条文から「mental retardation(精神発達遅滞)」「mentally retarded individual(精神発達遅滞の個人)」という表現が正式に削除され、「intellectual disability(知的障害)」「individual with an intellectual disability(知的障害を持つ個人)」に置き換えられました。

この法律の名前の由来は、ダウン症を持つ当時9歳の少女 Rosa Marcellino です。
自分の学校の個別教育計画に「mentally retarded」と記載されることを知った彼女と家族は、メリーランド州の法律から「retarded」という言葉を削除する2年にわたる運動を行い、それが連邦法の改正につながりました。
2013年には社会保障局も公式用語から「mental retardation」を廃止しています。

「冗談のつもり」でも問題な理由

「差別するつもりはない」「友達同士の冗談だ」という意図は、この言葉の持つ害を消しません。主に2つの理由があります。

1つ目は周囲への影響です。
その場にいない知的障害を持つ人々・その家族・支援者が、この言葉が軽く扱われる場面を目撃することで深く傷つきます。「バカ」の同義語として使うこと自体が「知的障害=劣っている」という偏見を強化・再生産します。

2つ目は言葉の規範の問題です。
軽い文脈で使われることで、その場の言語規範として「この言葉を使っても許される」という空気が生まれ、より深刻な差別的使用への抵抗感を下げます。
人種差別用語と同様に、使う側の「意図」よりも「受け取る側への影響」が重要です。

現在の社会的な扱い

現在、多くの SNS プラットフォーム・ゲームコミュニティ・職場で R ワードの使用は禁止またはルール違反とされています。
使用した場合はアカウント停止・警告・Ban の対象になります
英語圏では人種差別用語と同レベルの禁句として扱われており、公の場で使用した場合は強い批判を受けます。

代わりに使える表現

何かを批判・否定したい時に使える、障害と関係のない中立的な表現を使いましょう。
「馬鹿げている」→ ridiculous / absurd / nonsensical
「愚かな行動」→ silly / foolish mistake
「理解していない」→ uninformed / confused といった言い換えが適切です。

まとめ

retard は「遅らせる」という動詞を語源とし、19世紀末〜20世紀の医療現場で知的障害を指す診断用語として使われていましたが、1960年代以降に侮蔑語として広まり、障害者団体の長年の働きかけを経て2010年の Rosa’s Law でアメリカ連邦法から正式に削除されました。

現在は R ワード・R スラーと呼ばれる深刻なヘイトスピーチであり、軽い冗談や罵倒語としての使用も含めて完全に避けるべき言葉です。
言葉の歴史的な背景と、それが実際に生きている人々に与える影響を理解することが、適切な英語コミュニケーションの第一歩です。

もし差別や言葉の問題について相談したいことがあれば、信頼できる人や専門機関に相談することをお勧めします。

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