kin/alter の意味とは?
kin(キン) はフィクションのキャラクターや存在に強く自己同一性を感じることを指すネットスラングです。
「fictionkin(フィクションキン)」とも呼ばれ、「自分はそのキャラクターだ・そのキャラクターとして生まれ変わった」という感覚を持つことを指します。
英語では「I kin this character(このキャラは自分だ)」という動詞形でも使われます。
alter(オルター) は本来、解離性同一性障害(DID)や類似の解離症において現れる「別人格」を指す臨床心理学の用語です。
「alter ego(もう一つの自我)」の略で、DIDを持つ人が自分の人格システムを説明する際に使います。
フィクションキャラクターをベースにした人格は特に「fictive(フィクティブ)」または「fictional introject(フィクショナル・イントロジェクト)」と呼ばれます。
SNSやファンダムコミュニティでこの2つの言葉が「kin/alter」と並べて使われることがありますが、fictionkin(キャラクターとの同一視・アイデンティティ)とfictive alter(DIDにおける別人格)は本来まったく別の概念です。
この違いを理解することが、両コミュニティを尊重する上で重要です。
kin / alter はどんな時に使う?
fictionkin・キャラクター同一視を表す時
「I kin Asuka from Evangelion so hard(エヴァのアスカに超共感する・アスカは自分そのものだ)」
「My kin list includes three different BNHA characters(自分のkinリストには僕のヒーローアカデミアのキャラが3人いる)」
のように、特定のキャラクターと強く自己同一視していることを伝える時に使い、「〇〇(キャラクターの名前)kin」のように使うこともあります。
Tumblr・Twitter・Discord などのファンダムコミュニティでプロフィールや自己紹介に書かれることが多いです。
「kinning(キニング)」という動詞形は、キャラクターと自己同一視する行為そのものを指します。
ただしkinコミュニティの中では「genuine fictionkin(本物のfictionkin)」と「casual kinning(カジュアルなキャラ共感)」は区別されており、前者はアイデンティティの問題として真剣に捉えられています。
DID・解離症の文脈でalterを説明する時
「Our system has a fictive alter of that anime character(私たちのシステムには、そのアニメキャラをベースにしたalterがいる)」
のように、DIDを持つ人が自分のシステム(人格の集合)を説明する際に使われます。
「system(システム)」「fronting(フロンティング:特定のalterが表に出ること)」「headspace(ヘッドスペース:人格が共有する内部空間)」などの言葉とセットで登場します。
カジュアルな「キャラ共感」として
「Do you have any kins?(共感してるキャラいる?)」
「My biggest kin is Rei Ayanami(一番kinを感じるのは綾波レイ)」
のように、好きなキャラクターへの強い共感や自己投影を表すカジュアルな表現としても使われます。
このカジュアルな用法では本格的なfictionkinのアイデンティティとは区別されることが多く、「synpath(シンパス:キャラクターと共感するが同一視まではしない)」という別の言葉が使われる場合もあります。
kin / alter の元ネタ・由来
elfinkind・otherkinの誕生とインターネット上での発展(1970年〜1990年代)
kinという概念の最も古い起源はpagan(異教的)なスピリチュアルコミュニティで、1960〜70年代のオレゴン州に「自分はエルフだ」と信じる人々のグループ「Elf Queen’s Daughters」が存在していました。
その後1990年4月18日、University of Kentuckyの学生が運営していたメーリングリスト「Elfinkind Digest」のメンバー・Torinが「エルフ・ドラゴン・オークなどのkinと毎回タイプするのが面倒になり」「otherkin」という省略語を作ったことが記録されています。
1990年7月に「otherkin」という単語がこのコミュニティで定着し、「エルフ以外の存在として自己を認識する人々」を指す言葉として広まりました。
その後1990年代にはUsenet(alt.horror.werewolvesなど)でもこの概念が広まり、インターネット上のコミュニティとして発展しました。
otakukin・fictionkinの誕生(2001〜2004年)
フィクションキャラクターとの同一視を指す「fictionkin」という概念の前身は、2001年頃にKinjou Tenが自身のウェブサイト「Temple of the Ota-‘Kin」で作った「otakukin(オタキン)」という言葉です。
otakinはotaku(アニメファン)とotherkinを組み合わせた造語で、アニメ・ゲーム・マンガのキャラクターの魂を持つ・前世においてそのキャラクターだったという信念を持つ人々を指しました。
その後「アニメだけでなくすべての Fiction に広げる」必要から「mediakin」「fictionkin」という言葉が登場し、「fictionkin」という言葉が最初に登場したLiveJournalコミュニティ「From Fiction」が2004年に作られています。
Tumblrでの爆発的普及と「kinning」のカジュアル化・DIDコミュニティとの混在(2014年〜)
fictionkinとotherkinが大きく広まったのはTumblrを通じてで、特に2014年前後に爆発的に広まりました。
Fanloreによるとこの時期のTumblrでは「真剣なスピリチュアルなアイデンティティ」「トラウマへの対処法(copinglink)」「キャラクターへの共感をジョークとして扱うカジュアルな表現」という3段階で意味が変化していきました。
同時期に、DIDコミュニティが使っていた「alter」「system」「fronting」などの言葉がkinコミュニティにも流入し、fictionkin(キャラクターとの同一視)とfictive alter(DIDにおける別人格)の混同が起きるようになりました。
DIDコミュニティからは「私たちの臨床用語が誤った文脈で使われている」という批判が出ており、「kin/alter」という並列表記への批判的な視点も根強く存在します。
例文・使い方
kin / alter は悪い意味?ポジティブな意味?
kin自体は中立的でポジティブな表現で、キャラクターとの深い結びつきを表現する自己表現の形として多くのファンダムコミュニティで受け入れられています。
ただしコミュニティによって受け取られ方は大きく異なります。
genuine fictionkin(本物のfictionkin)の人々は自分のアイデンティティとして真剣に捉えていますが、外部からは懐疑的・嘲笑的に見られることもあります。
また「全員が同じキャラをkinしていいのか(doubles問題)」などのコミュニティ内議論も存在します。
alter・fictiveという言葉はDIDを持つ人々の臨床・個人的な経験を指す言葉であり、fictionkinとは本来別の概念です。
「kin/alter」という並列表記や、DIDの用語をfictionkinの文脈で使うことに対しては、DIDコミュニティから「私たちの経験が適切に理解されない原因になる」という批判があります。
どちらの意味で使われているかを文脈から読み取り、当事者の経験を尊重した使い方をすることが大切です。
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まとめ
kinはフィクションキャラクターとの強い自己同一視を指すネットスラングで、1990年代のotherkinコミュニティを語源に持ち、2001年頃のotakukin・2004年のfictionkinを経てTumblr上で2014年頃に爆発的に広まりました。
alterはDIDにおける別人格を指す臨床用語で、フィクションキャラクターをベースにした別人格は特にfictiveと呼ばれます。
SNSで「kin/alter」と並列されることがありますが、fictionkinとfictive alterは本来別の概念であり、DIDコミュニティはこの混同に対して批判的な立場を取っています。
どちらの言葉も当事者にとって重要な意味を持つ言葉のため、文脈を理解した上で使うことが大切です。
SNSやファンダムで見かけたときは、相手がどちらの意味で使っているか考えてみてくださいね!

