NPC の意味とは?
NPC(エヌピーシー) は「自分で考えず決まりきった反応しかしない人」「個性がなく流されているだけに見える人」を皮肉る言葉で、「Non-Player Character(ノンプレイヤーキャラクター)」 の略です。
もともとはゲーム用語で、プレイヤーが操作しないキャラクター(町人・店員・通行人など、決まったセリフを繰り返すだけのキャラクター)を指す言葉です。
そこから「まるでスクリプト通りに動いているようだ」「考えているようには見えない」という比喩として、実在の人間に向けて使われるようになりました。
NPC Wojak(NPC ウォジャク)というミームキャラクターが2016年7月に4chanで生まれ、2018年頃のアメリカ中間選挙前後に爆発的にバイラルしたことで、ゲーム文化以外にも広く知られるようになりました。基本的にネガティブで刺さりやすい侮辱的表現です。

NPC wojackたち
NPC はどんな時に使う?
テンプレ的な発言・定型反応を皮肉る時
コメント欄で同じような意見ばかり繰り返していたり、流行に何も考えず機械的に乗っているように見えたりする人に「NPC みたいだ」と言います。
「He talks like an NPC(彼、NPC みたいな話し方をする)」「Everyone in that thread sounds like the same NPC(あのスレ、みんな同じ NPC みたいなことしか言ってない)」のような形で使われます。
政治・文化論争での相手の否定として
NPC ミームは特に右派・反エスタブリッシュメント系のオンラインコミュニティで「主流メディアの意見をそのまま繰り返すだけの人」を指す言葉として定着しました。2018年10月には Twitter 上で r/The_Donald のユーザーたちが NPC アカウントを大量に作成し、Twitter が1,500以上のアカウントを BAN するという事件も起きています。
「I Support The Current Thing」ミームとして
2022年頃から「I Support The Current Thing(今話題のことを支持します)」というミームが NPC 文化から派生して広まりました。
ロシアのウクライナ侵攻・コロナ・女性の行進など次々と話題が変わるたびに、深く考えずその話題を SNS で支持するだけの人を揶揄するミームです。イーロン・マスク も2022年3月にこのミームをツイートしています。
NPC の元ネタ・由来
ゲーム用語としての起源(1970〜80年代〜)
NPC というゲーム用語そのものは、ペーパーロールプレイングゲーム(D&Dなど)の時代から存在し、その後コンピュータゲームに引き継がれた概念です。
スカイリム・Fallout・GTA などのオープンワールドゲームで「同じセリフしか言わない町人」というイメージが広く共有され、「NPC っぽい人」という比喩の土台になりました。
4chan での NPC ミーム誕生(2016年7月7日)
NPC Wojak(表情のないグレーの顔のキャラクター)は 2016年7月7日に 4chan の /v(ビデオゲーム)ボードで匿名ユーザーが「Are you an NPC?」というスレッドを立てたことがきっかけで生まれました。
投稿者は「NPCっぽい人間は自分のセリフしか言わない。議論すると毎回同じバズワードと使い古された主張しか出てこない」と書いており、このコンセプトが後のミームの核になりました。
2018年中間選挙前後のバイラルとTwitter騒動(2018年10月)
NPC ミームが爆発的に知られるようになったのは2018年10月です。
アメリカ中間選挙の数週間前にユーザーたちが NPC キャラクターの顔を使ったアカウントを大量に作成し、Twitter が「意図的に選挙を誤解させるコンテンツ」に違反するとして1,500以上のアカウントを一斉 BAN しました。
New York Times はこの動向を取材し、NPC を「右派オンラインコメンテーターの集団マスコット」と表現しました。この事件でミームは主流メディアにも取り上げられ、広く知られることになりました。
TikTok NPC 配信トレンドの元祖は日本人クリエイター(2021〜2023年)
NPC という言葉が全く別の文脈で再び注目を集めたのが、TikTok の「NPC 配信」トレンドです。
海外の多くの辞書系メディアによると、このトレンドの元祖とされているのが日本人 TikToker @Natuecoco(夏絵ココ)です。
2021年10月から TikTok ライブ配信を開始し、ゲームの NPC のようにアイドルアニメーション(軽く弾むような動き)をしながら、ギフトをもらった時だけ決まったフレーズや動作で反応するというスタイルを始めました。
2022年2月4日には @satoyu0704(別名 Ohio Final Boss)とコラボ配信を行い、二人で NPC ごっこをするスタイルが話題になりました。
2023年7月にカナダ人の TikToker Pinkydoll のNPC配信が Twitter 等で爆発的にバイラルし、「NPC 配信」が世界的なトレンドとして広まりました。
Washington Post はこの現象を取り上げ、NPC 配信者が1時間に200ドル以上を稼ぐこともあると報じています。
「日本人はNPC」という言説について
中国SNSで広まった「日本人NPC論」
2025年9月頃、中国のSNS「小紅書(Xiaohongshu)」で「日本という国はまるで巨大なオープンワールドゲームのようだ」「日本人はNPCっぽい」という言説が話題になり、日本のネットでも転載・議論されました。
日本を訪れた旅行者が「コンビニの店員が毎回まったく同じ流れで対応する」「行動パターンが予測できる・ランダム性が低い」という観察を、ゲームの NPC に例えたものです。
この言説の内容と問題点
この言説が指摘するのは、主に日本の高い接客マニュアル文化・行列に並ぶ秩序・暗黙のルールに従う習慣、つまり「予測可能で整然とした行動パターン」です。
日本語・中国語圏のネット上では「言われてみれば確かに」という反応と「ただのステレオタイプだ」という反論が共存しており、単純に賛否は決まっていません。
重要な点として、この観察の元となった note 記事の書き手自身も「一人ひとりの日本人は生き生きとした個性を持っている。ただここで言いたいのは共通して見られる高度な秩序性だ」と明記しており、日本人全体を否定する意図ではないと述べています。
また、中国の若者自身も小紅書や知乎で「NPC的な一日(毎日同じことを繰り返す自分の生活)」という自虐的な表現を使っており、「日本人だけがNPC」という論ではなく、現代社会の均一化・ルーティン化という普遍的な議題として語られている面もあります。
「日本=オープンワールド」という観光客感覚の問題
この言説と関連して、日本を「まるでゲームの世界(オープンワールド)のようだ」と感じ、周囲のNPC(日本人)が抗議しないのをいいことに好き放題する観光客の迷惑行為を問題視する声も出ており、この感覚そのものが問題であるという指摘が日本語SNS上でされているという状況です。
いずれにせよ、「相手がNPCだから何をしてもいい」という発想は実際には人を傷つける差別的行動の言い訳になりうる危険な考え方です。
例文・使い方
NPC は悪い意味?ポジティブな意味?
スラングとしての NPC は基本的にネガティブな侮辱語です。
「自分で考えていない」「個性がない」「流されているだけ」と相手を見なす言い方であり、直接向けられると強く侮辱的に感じられます。
TikTok NPC 配信でのセルフNPC は全く文脈が異なり、自分からゲームキャラクターのマネをするコンテンツ・エンタメとして肯定的に楽しまれており、同じ「NPC」という言葉でもまったく別の意味合いです。
「日本人はNPC」という言説に対しては「文化・習慣の違いに対するステレオタイプであり侮辱だ」という批判的見方と「確かに共通して見られる行動パターンを観察しているだけ」という見方が共存しており、単純にどちらが正しいとは言えません。
ただし NPC という言葉を使って人々を「考える必要のない背景キャラクター」扱いすることの問題点は意識しておく必要があります。
あわせて読みたい言葉
NPC と近い文脈で使われるスラングを見ておくと、ニュアンスの違いがわかりやすくなります。
まとめ
NPC は「Non-Player Character」から来た言葉で、「自分で考えず決まりきった反応しかしない人」を皮肉るスラングです。
TikTok では2021年に日本人クリエイターが元祖とされる「NPC 配信」というまったく別のトレンドが生まれ、2023年に世界的な現象になりました。
また2025年頃には中国SNSで「日本人はNPCっぽい(行動が予測可能)」という言説が話題になり、日本語圏でも議論されています。
ポジティブな使い方はほぼなく、相手に直接向けると強い侮辱になる言葉です。
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