troll の意味とは?
troll(トロール)は、インターネット上で他人を怒らせたり混乱させたりするために、わざと挑発的な発言や行動をする人を指す英語スラング・ネット用語です。
動詞として使う場合は「trolling(トローリング)」で、「荒らす」「挑発する」「釣る」といった意味になります。SNS、ゲーム、掲示板、コメント欄——オンライン空間ならどこでも使われる、インターネット文化で最も古く、最も普遍的なスラングの一つです。
日本語では「荒らし」「釣り」に近い概念ですが、troll はこの2つの意味を両方含んでおり、さらに「わざとバカなふりをして反応を引き出す」という要素も加わります。
troll はどんな時に使う?
悪意のある荒らし行為として
最も一般的な使い方です。SNSで炎上を狙って過激な意見を投稿する人、コメント欄で関係のない暴言を書き込む人、フォーラムで意図的にスレッドを脱線させる人—こうした行動やその行為者を troll と呼びます。
「He’s just a troll, ignore him(あいつはただの荒らしだ、無視しろ)」のように、相手にしないことを促す文脈で使われることが多いです。
ゲームでの妨害行為(griefing)として
オンラインゲームでは、味方をわざと邪魔する、試合をわざと負けようとする、チャットで暴言を吐くなどの行為を「trolling」と呼びます。ゲーム文脈では griefing(グリーフィング) とも重なりますが、griefing がより悪質な妨害を指すのに対し、trolling は「反応を楽しむためのいたずら」のニュアンスが強めです。
軽いジョーク・いたずらとして
友人同士の冗談やいたずらを指す軽い用法もあります。「I was trolling my friend by pretending I forgot his birthday(友達の誕生日を忘れたふりしてからかってた)」のように、悪意のないからかいに対しても使えます。
この場合、troll は「ちょっとした嘘やボケで相手の反応を楽しむ」程度の意味で、荒らしとは異なるポジティブなニュアンスです。
troll の元ネタ・由来
釣りの技法「trolling」(元の意味)
troll の語源は、釣りの技法「trolling(トローリング)」です。これはボートの後ろから餌やルアーを引きずり、魚を誘い出す釣り方。ネット上で挑発的な発言(=餌)を投げ込み、反応(=魚がかかる)を引き出す行為がこの釣りに例えられ、「trolling」と呼ばれるようになりました。
軍事用語としての「trolling for MiGs」(1972年)
インターネット以前にも、trolling は軍事スラングとして存在していました。1972年、ベトナム戦争中のアメリカ海軍パイロットが、おとりを使ってソ連製 MiG 戦闘機を誘い出す戦術を 「trolling for MiGs」 と呼んでいた記録があります。「挑発して相手を引き出す」という本質は、ネットの trolling と同じです。
Usenet での誕生(1992年)
ネットスラングとしての troll が文書で確認できる最古の記録は、1992年12月14日、Usenet のニュースグループ alt.folklore.urban(AFU) での投稿です。
当初の trolling は「trolling for newbies(新人釣り)」と呼ばれ、ベテランユーザーがわざと使い古されたネタや的外れな質問を投稿し、初心者だけが真剣に反応する——という内輪ジョークでした。悪意よりもユーモアが中心で、「釣りに引っかからなければ仲間、引っかかったら新人」という選別ゲームの性格を持っていました。
北欧神話のトロールとの融合
trolling の語源は釣りですが、この言葉が定着する過程で北欧神話の「トロール」——醜く、意地悪で、橋の下に住んで旅人を困らせる怪物——のイメージと混ざりました。
語源としては無関係ですが、「人を困らせる」という行動が北欧のトロールにぴったり重なるため、troll と言えばこの怪物のイメージも付随するようになりました。有名なフレーズ 「Don’t feed the troll(トロールにエサをやるな=荒らしに反応するな)」 は、この怪物のイメージから来ています。
4chan と trolling 文化の過激化(2000年代〜)
2003年に開設された4chanは、匿名掲示板の特性を活かして trolling を文化として育てた場所 です。「for the lulz(笑いのために)」を合言葉に、4chanの /b/ 板はインターネット上で最も悪名高い trolling の拠点となりました。
この時期から trolling は、Usenet 時代の穏やかな内輪ジョークから、より攻撃的で組織的な嫌がらせへと性格を変えていきます。Encyclopedia Dramatica(トロールの百科事典とも呼ばれるサイト)が設立されたのもこの頃で、trolling の手法やエピソードが体系化されました。
2010年代:意味の拡大と曖昧化
2010年代以降、メディアがあらゆるオンラインの嫌がらせを「trolling」と呼ぶようになり、言葉の意味が大きく広がりました。ネットいじめ、ヘイトスピーチ、ドクシング(個人情報の暴露)、組織的な攻撃——本来の trolling(反応を楽しむための挑発)とは性質の異なる行為まで「trolling」のラベルが貼られるようになっています。
この意味の拡大に対しては、「本当のトロールは反応がなければ消えるが、嫌がらせは反応がなくても続く」という批判もあり、trolling という言葉で深刻な問題を矮小化すべきではないという議論が続いています。
「Don’t feed the troll」— 最も有名なネット格言
「Don’t feed the troll(トロールにエサをやるな)」 は、インターネット文化で最も有名な格言の一つです。
荒らしの目的は「反応を得ること」なので、反応しなければ荒らしは退屈して去っていく——という考え方。Usenet 時代から掲示板やフォーラムで使われ続けている、trolling への最も基本的な対処法です。
ただし、この格言には限界もあります。軽い挑発には有効ですが、組織的な嫌がらせ、ヘイトスピーチ、脅迫などに対して「無視すれば消える」は適切な対処ではない場合もあります。
trolling の派生表現
日本語の「釣り」「荒らし」との関係
英語の trolling は、日本語のネット用語と非常に近い対応関係があります。
つまり、英語の troll は日本語の「釣り」と「荒らし」を一語で兼ねている言葉です。
例文・使い方
troll は悪い意味?ポジティブな意味?
troll は基本的にネガティブな意味で使われます。他人を困らせる迷惑行為を指し、オンラインゲームやSNSでは嫌われる存在です。
ただし、文脈によってはユーモラスなニュアンスにもなります。
あわせて読みたい言葉
troll と近い文脈で使われるスラングやミームを見ておくと、ニュアンスの違いがわかりやすくなります。
まとめ
troll は、インターネット上で他人を挑発したり困らせたりする人や行為を指すスラングで、1992年の Usenet(alt.folklore.urban)が文書で確認できる最古の発祥地です。
釣りの技法 trolling → 軍事スラング → Usenet の内輪ジョーク → 4chan の攻撃的な文化 → 現代のSNSにおける広義の「荒らし」へと、30年以上かけて意味が拡大してきました。日本語の「釣り」と「荒らし」を一語で兼ねるこの言葉は、ネット文化を理解する上で避けて通れない基本用語です。
「Don’t feed the troll」——この格言を覚えておくだけでも、オンラインでの余計なストレスはかなり減りますよ。

